賃貸物件の断熱性能の調べ方｜メリットや注意点を解説

次に引っ越すなら「一年中快適な賃貸物件に住みたい」と、考えている人は多いのではないでしょうか。

最近では省エネや快適さを求めて「断熱性能」に注目する方が増えていますが、賃貸物件の情報を見ても「きちんと断熱されているのか？」と判断に迷うこともあるでしょう。

賃貸物件でも、ある程度の断熱性を見極める方法があります。

物件情報の中で見るべきポイントや、内見時のチェック方法、設備や構造などから断熱性能の調べ方を知っておくと後悔のない引っ越しができるでしょう。

今回は「断熱性の高い賃貸物件を選びたい」という方のために、断熱性能の調べ方やメリット、注意点を分かりやすくご紹介します。

1年中快適で光熱費を抑えられる賃貸を探している方は、この記事を参考にしていただけたら嬉しいです。

賃貸物件の断熱性能の基礎知識

賃貸住宅を選ぶ時、間取りや立地だけでなく「断熱性能」も選ぶポイントです。

断熱性能が高い物件は光熱費を抑えられ、季節を問わず快適に過ごせます。

まずは、断熱性能とは何か、その重要性や今後の法改正について基礎から解説します。

断熱性能とは

断熱性能とは、室内と外気の熱の出入りを抑える性能のことを指します。

高い断熱性能を持つ住宅は外気の影響を受けにくく、冷暖房効率が上がります。

住宅の断熱性は主に「断熱材の種類・厚み」「窓の構造（複層ガラスなど）」「建物全体の気密性」です。

断熱等性能等級という指標で示され、数値が高いほどすぐれています。

断熱性能は省エネや快適性に直結するため、住宅の性能を評価するうえで非常に重要です。

住宅の断熱性能について、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

断熱性能等級とは？具体的な断熱等級の基準やメリットを解説

賃貸でも断熱性が重要な理由とは

賃貸住宅は、これまで断熱性能が重視されにくい傾向がありました。

しかし、光熱費の高騰や健康意識の高まりから、近年では賃貸でも断熱性を重視する人が増えています。

断熱性の低い物件は、夏は暑く冬は寒いため冷暖房費がかかり体にも負担です。

一方で断熱性の高い物件は快適な室温を維持しやすく、生活の質が向上します。

長く安心して暮らすには、賃貸でも断熱性能は重要です。

2025年から賃貸住宅でも断熱等級4の適合が義務化される

2025年から新築の賃貸住宅については「断熱等性能等級4」への適合が義務化されます。

断熱等性能等級は国が定めた省エネルギー基準で、最低限の断熱性能を確保するための指標です。

断熱等級4は壁や天井だけでなく、開口部（窓や玄関ドア）などにも断熱を施す必要があります。

今後は、これまで以上に賃貸住宅の性能が重視される時代になります。

参照：国土交通省「家選びの基準変わります」

賃貸の構造によって異なる断熱性能

賃貸住宅の断熱性能は、使われている建物の「構造」によっても大きく左右されます。

構造によって断熱性、気密性、熱の伝わりやすさが異なるため、入居後の快適性や光熱費にも差が生まれます。

代表的な「木造」「軽量鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つの構造について、それぞれの断熱性能の特徴を見ていきましょう。

＜賃貸の構造によって異なる断熱性能＞

構造形式	断熱性能の傾向	特徴・注意点
木造	比較的断熱しやすい	柱と柱の間に断熱材を入れやすいため、施工次第で高断熱も可能 遮音性はやや低い傾向
軽量鉄骨造	断熱性能は中程度からやや低め	鉄は熱を通しやすく、断熱材の施工精度が重要 壁が薄いと外気の影響を受けやすい
鉄筋コンクリート造	高い断熱性を確保しやすい	蓄熱性が高く、室温が安定しやすい 外気温の影響を受けにくく、冷暖房効率も良好 物件により断熱性能に差がある

木造

木造は、日本の賃貸住宅で最も多く採用されている構造です。

木は鉄やコンクリートに比べて熱を伝えにくいので、構造自体が断熱に向いています。

また、柱と柱の間に断熱材を充填しやすく、比較的高い断熱性能を確保できるでしょう。

ただし、築年数が古い木造住宅では断熱材が入っていない、または劣化していることもあるので注意が必要です。

軽量鉄骨造

軽量鉄骨造は木造よりも耐震性が高く、新しい賃貸住宅によく見られる構造です。

ただし、鉄は熱を伝えやすいため、構造体そのものが外気の温度を室内に伝えてしまう傾向があります。

そのため、軽量鉄骨造の住宅は、断熱材や施工精度が重要です。

軽量鉄骨造の物件を選ぶ場合は、断熱材の種類や厚み、断熱施工の有無について確認しておくと安心です。

鉄筋コンクリート

鉄筋コンクリート造は、分譲マンションタイプの賃貸物件で多く採用されています。

コンクリートは蓄熱性が高いため、外気の影響を受けにくく、室温が安定しやすいのが特徴です。

鉄筋コンクリートは断熱材がしっかりと施工されていれば、高い断熱性能を実現できるでしょう。

また、近年の鉄筋コンクリート造の建物は、省エネ性を考慮した設計が多く、断熱性・遮音性とともにすぐれています。

ただし、鉄筋コンクリート造でも築年数が古い場合は断熱材が使われていないこともあるので確認をしましょう。

賃貸物件の断熱性能の調べ方【5選】

賃貸住宅を選ぶ際、断熱性能が高いと暮らしの快適さや光熱費に大きく影響します。

しかし、不動産情報に「断熱性能」が明記されていることは少なく、入居前に確認するのは難しいのが現実です。

ここからは、断熱性能の5つの調べ方をご紹介します。

入居後に後悔しないためにも、内見時や事前確認のポイントを押さえておきましょう。

1.築年数をチェックする

築年数は、断熱性能を判断するうえでの指標になります。

1999年以前に建てられた物件は、断熱材が十分に使われていない可能性があります。

2013年以降は省エネ基準に適合した住宅が増えているため、断熱性の高い物件が多い傾向に。

ただし、リノベーション済み物件の場合は、断熱性能が改善されているケースもあり、築年数だけでなく改修の有無も確認しましょう。

2.構造を確認する

物件の構造も、断熱性能に大きく関係します。

一般的に、鉄筋コンクリート造は断熱性が高く、木造や軽量鉄骨造は構造によって差が出やすい傾向です。

構造が「木造」や「軽量鉄骨造」であっても、断熱材の有無や施工方法によっては高断熱のケースもあります。

建物の構造は物件情報に記載されていることが多いため、必ずチェックしましょう。

3.内見の際に室内の寒さや暑さの感じ方を体感する

実際に物件を内見する時は、断熱性能を体感できる絶好の機会です。

冬場に内見した場合「室内が寒い」「窓まわりが冷えている」といった状況は断熱性能が低い可能性があります。

また、エアコンを使わずに一定の快適さを感じられるなら、高い断熱性が備わっているでしょう。

目に見えない断熱性能だからこそ、内見で実際に体感することが有効でしょう。

4.管理会社などに断熱材の有無を聞いてみる

気になる物件があれば、管理会社や大家さんに「断熱材は入っていますか？」「どのような施工がされていますか？」と質問してみましょう。

直接聞くことで物件に対する理解も深まり、誠実に対応してくれる管理会社かどうかも判断できます。

壁や天井のリフォーム歴が分かる場合、それが断熱性向上のためであるかもしれません。

すべての情報を教えてもらえるとは限りませんが、断熱性の有無を確認することも重要です。

5.住戸性能評価書を確認する

物件によっては「BELS（建築物省エネルギー性能表示制度）」や「住宅性能評価書」などの公的な性能表示を受けていることがあります。

このような性能表示は断熱性を含む省エネ性能が数値で記載されているので、物件を客観的に判断できます。

新築やZEH対応の賃貸ではこうした評価書が発行されている場合もあるので、不動産会社に確認してみると良いでしょう。

参照：建築物省エネルギー性能表示制度

参照：住宅性能評価書

断熱性能の高い賃貸物件の5つのメリット

断熱性能が高い賃貸物件は単に「冬暖かい」「夏涼しい」だけでなく、生活全体にさまざまなメリットをもたらします。

室内環境が整うと健康面にも良い影響があり、光熱費の節約や設備面での満足度も向上するでしょう。

ここからは、断熱性能の高い賃貸に住むことで得られる5つのメリットについてご紹介します。

1.光熱費を節約できる

断熱性能が高い住まいは冷暖房に頼る時間が少なくなり、光熱費を大きく抑えられます。

室内が外気の影響を受けにくいため、エアコンや暖房器具の使用を最小限にできるでしょう。

真冬や真夏などエネルギー消費が増える時期には、断熱性の高さが家計に直結します。

賃貸であっても月々の出費を抑えたい人にとって、高断熱の物件は経済的でしょう。

2.1年中快適な室温で過ごしやすい

高断熱の賃貸住宅は外気温に左右されにくいので、1年中快適な室温で過ごせます。

夏でも室内が過度に暑くならず、冬も底冷えを感じにくい環境が整うでしょう。

外気の影響を受けにくいことからエアコンの効きが良く、短時間の運転でも快適な室温が保てるのも魅力です。

小さな子供や高齢者がいる家庭では、室内の温度差が少ないことが健康面の安心にもつながります。

3.結露やカビが発生しにくい

断熱性の高い住宅は、結露やカビが発生しにくいというメリットもあります。

高断熱の家は結露の原因とされる「窓の表面温度が外気温との差で極端に下がること」がありません。

結露が少ないとカビの発生も抑制でき、住環境が清潔に保てるでしょう。

カビを吸い込むとアレルギーの原因にもなるため、結露を防げることは家族全員の健康管理につながります。

4.健康的に暮らせる

断熱性能が高いと、健康的に暮らせるのも大きなメリットです。

断熱性能が高い家は部屋ごとの温度差が少なくなり「ヒートショック」予防になります。

温度や湿度のバランスが良い室内は、子供や高齢者にも過ごしやすい環境です。

高断熱の家は冷えや湿気からくる不調が減り、健康を意識した暮らしができるでしょう。

5.設備や性能のグレードが高い傾向がある

断熱性にすぐれた賃貸物件は、設備や性能のグレードが高い傾向があります。

たとえば、複層ガラスや断熱サッシ、高効率エアコンなど、省エネ性能の高い設備が整っている場合が多いでしょう。

高断熱の賃貸住宅は最新の省エネ基準に準拠しているケースが多く、長期的に見ても住み心地が良くなります。

断熱性の高い賃貸住宅は快適性だけでなく、機能的にも満足のいく住まいになるでしょう。

断熱性能の高い賃貸を選ぶ際の3つの注意点

断熱性能の高い賃貸物件には多くのメリットがありますが、選ぶ際には注意すべきポイントがあります。

賃貸は築年数や構造だけで判断すると実際の断熱性と異なることもあるため、細かな部分まで目を配ることが大切です。

ここからは、断熱性能の高い賃貸を選ぶ際に気をつけたい3つの注意点についてご紹介します。

1.築年数だけで断熱性能を判断しない

築年数は断熱性を見極めるための目安の一つですが、それだけで断熱性能を正確に判断しないようにしましょう。

たとえば、築年数の浅い物件でも建築基準が緩かった時期に建てられることや、コストカットされた場合は断熱材が不十分なケースがあります。

築年数が経っていても、断熱リフォームしているのであれば性能も向上している可能性があります。

断熱性の高い物件を選ぶ際は築年数だけに頼らず、構造やリフォーム履歴、断熱材の使用状況などを総合的に判断しましょう。

2.窓の性能や構造もチェックする

断熱性の高い住宅は、窓の性能や構造もチェックしましょう。

住宅の中で外気の影響を最も受けやすいのが『窓』です。

たとえ壁に断熱材が入っていても単板ガラスや古いアルミサッシを使用すると、断熱性能が大きく損なわれます。

内見時には「窓ガラスが複層ガラスになっているか」「サッシの素材は樹脂かアルミか」などを確認するのがおすすめ。

窓まわりの仕様を確認するだけでも、住まい全体の断熱性能をある程度推測できるでしょう。

3.断熱材の有無や種類を確認する

断熱材の有無や種類は、賃貸住宅の断熱性を左右する重要なポイントです。

ただし、断熱材は壁の中にあるため目視で確認することは難しく、不動産会社や管理会社に確認するのが基本となります。

「どの部位に断熱材が使われているのか」「どのような断熱材を使用しているのか」を聞くことで、施工の質もイメージしやすくなるでしょう。

断熱性能を確認する場合は、納得できる情報が得られるまで確認することが大切です。

断熱性能の高い家に住んで後悔するポイントと解決法について、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

断熱性の高い家に住んでみて後悔するポイントと解決法｜メリットや注意点も解説

まとめ｜断熱性能を見極めて快適な賃貸暮らしを実現しましょう

断熱性能は賃貸住宅において、快適な暮らしや家計の負担軽減に関わる重要な要素です。

断熱性の高い物件は1年を通して快適に過ごせるだけでなく、結露やカビを防ぎ、健康的な住環境を実現できるのも魅力。

断熱性能が高い賃貸物件であるかどうかは、築年数や構造だけでなく、窓の仕様や断熱材の有無などさまざまな視点から物件をチェックすることが大切です。

賃貸物件をお探しの方は、ぜひこの記事を参考に断熱性能にも目を向けてみてください。