居心地よく風情・情緒を感じ懐かしく思い出に残る家。【LOHAS×建築家伊礼智i-worksプロジェクト】
家とは、性能がよく快適だということだけでなく、五感で感じる心地よさや日本らしい風情や情緒といったものが感じられると、より家に愛着が増してきます。
四季折々の自然の風景豊かな日本。そして森林率の高い木のある暮らしの文化を育んで来た日本では、木の温もりや縁側や窓辺等の家の中と庭をつなぐ場所が心地よく感じるようです。
家族の幸せな思い出が家に畳みこまれていて、子供が巣立った後もふとしたきっかけでその懐かしい思い出が鮮明に蘇り幸せな気持ちになれて、帰って来たくなるような家。両親がが建てた家を子供の代迄愛着を持って住み継がれていく。長寿命な時代には、住宅ローンが終わる頃に空き家になってしまうような家ではなく長く暮らしていける家がいいのではないでしょうか。
その為には、居心地良さ、風情や情緒を感じる、五感で感じて心に響く心地よさなど、家の空間と素材感と家族の記憶と言葉が結びついた暮らしのシーンが送れるようになるといいと思います。
空間工房LOHASの設立当初からそんな日本の風土やにあった心地よさと心に響く美しさを感じさせてくれる、建築家伊礼智氏の木の家のそこでしか感じられない空間に憧れ学ばせていただいています。
誰もが心地良く感じる家を追求した、建築家伊礼智氏のi-worksプロジェクトから学び美しい街並みとなる家が次の世代にも残っていけるように。
伊礼智氏の設計思想「ちいさくてもゆたかな暮らし」
建築家 伊礼智氏は、誰もが心地よいと思える家づくりを実現するために、システム設計を行っています。
提案型住宅としてのプロジェクト「i-works project」を立ち上げ、「ちいさくてもゆたかに暮らすこと」のできる資産価値の高い住まいを提供しています。
ちいさい・・・ちいさくすることは、凝縮することであり、高機能にするための行為といった、さまざまな意味があります。
ゆたか・・・それは、心地よさを意味します。居場所をつくること、素材へのこだわりは、質の高い空間を演出します。
ちいさくすることは、面積を抑えるため、費用を抑えることもできます。
その分を、素材にこだわり、設計に工夫を凝らすことで、上質な空間づくりを実現させる。
これが、「ちいさくても、ゆたかな暮らし」です。
伊礼氏は、旅先で“いいな”と思った場所に出会うと、必ずスケッチをし、知りたいところを測るといいます。
感性を視覚化し、体験として具体的に記録をし、その一式を経験として刻み、設計に活かし提案をする、という流れを大切にしています。
「小さな家」の原点
家族6人、この小さな沖縄の家で増改築を繰り返しながら過ごした幼少期が、伊礼氏の「小さな家」の原点です。
沖縄の小さな家で生まれ育ちました。子供の頃過ごした家は延べ床15坪ほど、セメント瓦ではありましたが、伝統的な沖縄の民家風でした。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
伊礼氏の考える「小さな家」とは、具体的にどのような家のことなのでしょうか。
小さいということをネガティブにとらえる必要はない、「クールなウサギ小屋」でかまわないと思うのです。面積を小さめにすることで、余裕ができた予算を、質を上げるということに使うほうが心地よく暮らせるのではないかと思います。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
そして、「小さな家」とは、例えば以下のようにまとめています。
小さな家は最大のエコ
平面だけではなく、立体で住まいを考える、暮らしのぜい肉を削ぎ落とすということ。
小さくして質を上げる
質を上げるということは、敷地が小さいから、仕方なく小さい家を建てると考えるのではなくて、あえて小さい家に住もうという考え方。
小さな家は決して粗末ではない
大きさをコンパクトにして、その代わり坪単価を上げて、丁寧に作り込んでいく住宅。小さな家に住むことが美徳であり、カッコイイことであるとの価値の転換。
小さな家はカワイイ
「普通に見えて、よく見ると、普通ではない」という感想をときどきいただくが、それが何となく、「カワイイという肯定感情」に繋がる。小さな空間の中に大きな価値が詰まった玉手箱のようなものであると思いたいものです。
これらが、伊礼氏の考える「小さな家」の良さなのです。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
参考コラム:【i-works×LOHAS】伊礼智の「小さな家」とは?
「小さな家」をおおらかな空間にする工夫
空間を効率的に目一杯使ってしまいがちな小さな家を、あえておおらかな空間にすることに、伊礼氏の設計思想が宿っています。
小さな家ではどうしても無駄なく、合理的にまとめようとして、生活の潤いや楽しさが欠落した退屈な設計になりがちです。あえて、小さな家の中に小さな居場所_それもとっておきの心地よさをもった楽しい工夫を施す_を設けることがあります。そのような遊び心を持つことで、小さな家の窮屈さを、思わず頬がゆるむ居場所に帰ることができて、おおらかな気持ちになれるような気がすることでしょう。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
「小さな家」をおおらかな空間にする工夫を、以下のようにまとめています。
常識的な寸法を疑う
平面計画以上に断面計画も精査。自分の体で、この寸法がいけるのか、いけないのかを確認しながら設計を進めるのが、小さな家を上手に設計するコツです。
あちこちに居場所を設ける
時間によって同じスペースがさまざまに使われる、小さな家を大きく暮らすお手本ともいうべき部屋なのです。
開口部近傍に心地よさは宿る
開口部近傍こそ、最もデザインの可能性がある、新しい心地よさを創り出せる場所。外部からの光や熱、風や香り、音やコミュニケーション、さまざまな情報を取り入れて、どれを拒否するか・・・。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
参考コラム:【i-works×LOHAS】伊礼智の建築・ちいさくてもゆたかに暮らす家づくり
「小さな家」は細部にまでこだわる
伊礼氏の「小さな家」は、その定義や設計に加えて、トータルバランスまでを意識するからこそ洗練されているといえます。細部にまでこだわり、つくられているのです。
建具は天井まで
天井を高くして垂れ壁をつくって建具を入れた場合と、天井を低くして建具を天井までの高さとした場合、目の錯覚を利用しているのかもしれませんが、天井が低くても、実際よりも天井が高く感じられます。
低めの家具を選ぶ
普通の設計に90%くらいの縮小コピーをかけるくらいの感じでしょうか?小さな家の魅力はギュッとした密度の高い、コクのある空間だと思っています。
廊下をなくし、家具で仕切る
小さな家を成功させるコツは、でこぼこした間取りではなく、できるだけ方形(四角い形)にまとめることです。
<中略>
仕切りは壁でという常識を捨てて、収納家具、置き家具を上手に使いこなすことで収納量を増やしながら必要な領域を切り取ることができます。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
参考コラム:【i-works×LOHAS】伊礼智の小さな家の間取りの作り方レシピ
プレタポルテな家づくり
伊礼氏が目指したのは、「プレタポルテな家づくり」です。
「プレタポルテ」とはアパレル業界で「質の高い既製服」の意味。誰かのためのフルオーダー住宅「オートクチュール」ではなく、建築を「標準化」することにより、オートクチュールの上質さを纏(まとわ)った既製服を提供する。
引用:i-works project
そして、「標準化」を目指すにあたり、住まいへの考え方が二つあります。
誰もが心地よいと思える住まい
特定の誰かのための「特殊解」ではなく、「一般解」として、心地よく住まうことのできる家。これまで伊礼智氏が手がけてきた住宅をブラッシュアップしながら各部位を「標準化」することで、資産価値が高い家を提供します。
永く飽きのこない住まい
家づくりを考えるきっかけは人それぞれですが、住まいは洋服や車のようにおいそれと買い替えができない代物です。20年、30年先を見越して、永く飽きのこない住まいとすることは、住まいの耐久性と同じくらい大切なこと。伊礼智の考える住まいは、いつもシンプルでそれでいて滋味にあふれ、ゆたかな空間をつくりだします。
心地よく過ごせる居場所のある滋味あふれる豊かな空間
窓辺の居心地のいいソファーなど、庭や周囲の環境とつながった情緒や風情を感じながら心地よく過ごせる居場所。心地よさがじわ~っと深くに心に響く、豊かで味わいがあり、永く愛着をもって暮らせる家です。
「標準化の設計」を体現したアーキテクチャ「i-works project」の実例紹介
前述通り、伊礼氏の「プレタポルテな家づくり」という標準化の設計を体現したアーキテクチャが、「i-works project」になります。
「i-works project」は、4つの実例がHPにて紹介されていますが、そのうちの二つを解説します。
i-works 1.0
スクエアで、効率的なプランの代表例です。
3LDKで2階に居室を配置しています。
シンプルなプランであり、居室と居室でつなぐユニバーサルデザインや対角線の効果を採用することでの解放感、ウッドデッキを有効活用し外部とのつながりを意識することで、広々とした空間を確保していることが特徴的です。
参考コラム:【i-works project×LOHAS】建築家 伊礼智氏「プレタポルテな家づくり」の具体例と魅力について、詳しく解説します
i-works 2.0
変形した敷地を想定し、駐車場や外構を配置したi-works2.0。
コンパクトでありながらも、ライフスタイルにあわせた展開プランを4つ用意しています。
家事動線を工夫した本プランは、まちと家の間をデザインしています。
北側に配置したキッチンから勝手口のすぐ先にある駐車場へも楽に移動できるようにし、
入口の東側に、低い外壁や植栽によって実現したセミクローズド外構は、
外部のまちと建物入口の間をつくり、閉塞感なく、しかもオープンしすぎないというほどよい空間が特徴です。
参考コラム:【i-works project×LOHAS】建築家 伊礼智氏「プレタポルテな家づくり」の具体例と魅力について、詳しく解説します
i-works 3.0
i-works 1.0と2.0の ”ちょうど中間” の3.5間角のベース。
納戸付きの広々とした玄関スペースに加え、L型のキッチンを採用して回れる家事動線を実現。オプションとして下屋を足すことで、余裕ある空間構成を実現することが出来ます。
i-works 4.0
i-works初の平屋タイプ(申請は2階建て)。4畳半を組合せたプランには、使いやすいコックピット型のキッチンを採用。
1階で生活が完結するプランです。2階は予備室、巣立った子供たちが泊まれるようになっています。
ところが設計を進めていくにつれて子育て世帯にも向くことが分かりました。
真壁工法でi-worksの中でもっとも目視率が高い。4畳半の空間に自分の暮らしを割り当てていくような感覚のプランです。
建築家 伊礼智氏プロフィール
1959年 沖縄県生まれ
1982年 琉球大学理工学部建設工学科計画研究室卒業
1985年 東京芸術大学美術学部建築科大学院修了
丸谷博男+エーアンドエーにて10年ほど勤務
1996年 伊礼智設計室開設。
2005年から日本大学生産工学部建築工学科居住空間デザインコース非常勤講師。
2006年「東京町家・9坪の家」でエコビルド賞受賞
2007年「東京町家・町角の家」でエコビルド賞受賞
2013年「i-works project」でグッドデザイン賞を受賞。
主な著作:『伊礼智の住宅設計作法』(2009年 編集/新建新聞社・発行/アース工房)/『伊礼智の住宅設計』(2012年 発行/エクスナレッジ)/『伊礼智の「小さな家」70のレシピ』(2014年 発行/エクスナレッジ)「伊礼智の住宅デザイン 〜DVDデジタル図面集」(2017年 発行/エクスナレッジ)
※文中の写真は、一部のぞき伊礼智氏i-works projectHPより