国をあげてカーボンニュートラル実現への取り組みが進められる中、省エネ住宅への関心が高まっています。「これからリフォームするなら、省エネ住宅の極みであるパッシブハウスにリフォームしてみたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パッシブハウスはリフォームでも可能なのか、建て替えとリフォームどちらが良いのか解説しています。
この記事でわかること
・パッシブハウスを建てるための条件がわかります。
・パッシブハウスはリフォームでも可能かわかります。
・パッシブハウスを建て替えかリフォームかで迷ったときの見極め方がわかります。
Contents
パッシブハウスの条件とは?
パッシブハウスとは、環境先進国ドイツで誕生した世界基準の省エネ住宅です。世界最高峰ともいわれる厳しい省エネ基準が設けられており、以下の基準を満たした建物のみがパッシブハウスとして認定されます。
・冷暖房負荷が各15kwh/㎡以下
・一次エネルギー消費量が120kWh/㎡以下
・気密性能として50Paの加圧時の漏気回数0.6回以下
例えば、省エネ基準として今後日本で適合が義務付けられる断熱等性能等級の「等級4」における冷暖房負荷の基準値は「127.8kWh/m2」です。パッシブハウスの年間冷暖房負荷「15kWh/m2」と比較すると、パッシブハウス基準がいかに厳しいかわかるのではないでしょうか。
この基準を達成するための具体的な構造例を以下に紹介します。
厚さ30㎝以上の断熱材で断熱性を高める
パッシブハウスでは、外壁の断熱性能にも厳しい基準値が設定されています。この基準をクリアするためには、厚さ30㎝以上の断熱材を使用し、さらに内壁や外壁のスペースを加えると40㎝〜50㎝の厚みを確保しなければなりません。
外壁の厚さは15㎝程度が一般的である日本の住宅に対し、パッシブハウスでは約3倍もの厚さが必要となるのです。日本の都市部では、ただでさえ確保できる居住スペースが限られており、パッシブハウスに適した条件を備えた土地を探すことが最初の課題となるケースも多くあります。
熱交換換気システムを使用する
パッシブハウスには、熱回収率75%以上の「熱交換換気システム」を標準装備することが求められます。
熱交換換気システムとは、室内の空気の温度を活用し、取り込む外気を冬は温め、夏は冷やして換気を行うシステムです。日本の一般的な住宅では聞き慣れないシステムですが、この熱交換換気システムを装備することで、換気による室温への影響を最小限に抑えられます。
窓部分にも断熱性能を高める工夫をする
外気に直接触れている窓は、家の断熱性を大きく左右するポイントです。パッシブハウスの基準をクリアするためには、間にアルゴンガスを充填したガラスを三重にし、さらにサッシにも断熱材を使用するなど、外気による影響を徹底的に防ぐ構造にする必要があります。
それでも厚さ30㎝の断熱材を入れた壁に比べると断熱性が低いため、窓の大きさも制限しなければなりません。また、断熱材を貫通して外部に通じる部分がある構造は室内の熱をどんどん逃してしまうため、ベランダは設置しないほうがよいでしょう。
また、夏の強い日差しを遮るためには、庇(ひさし)が効果的です。日射は室内に届く前に外で遮ったほうが高い効果が得られるため、深く突き出した庇を設置するとよいでしょう。
このようにパッシブハウスには厳しい数値基準が設けられており、パッシブハウスジャパンを通じてドイツのパッシブハウス認証機関に認められた家しか正式な「パッシブハウス」と名乗ることができません。数ある省エネ住宅の中でも世界基準のパッシブハウスについて詳しく知りたい方は以下のコラムも参考にしてみてください。
パッシブハウスはリフォームでも可能か?
厳しい省エネ基準をクリアしなければならないパッシブハウスですが、リフォームでパッシブハウスを建てることはできるのでしょうか。
「パッシブハウス」を名乗れるのは認証機関の審査に合格した建物だけ
世界的に省エネへの取り組みが叫ばれる中、近年多くのハウスメーカー、工務店がZEH、スマートハウスなどさまざまな省エネ住宅を取り扱っています。その中でパッシブデザインを取り入れた住宅として「パッシブハウス」と銘打って売り出されている住宅もあります。
しかし、実は「パッシブハウス」を正式に名乗れるのは、ドイツの認証機関で審査を受け、基準に適合していると認定された住宅だけなのです。パッシブハウスの認定基準を独自にクリアしている住宅は多くありますが、正式なパッシブハウスではないことに注意が必要です。
省エネに関する豊富な知識や高度な技術を求められるパッシブハウスを建てられるのは、日本の認証機関であるパッシブハウス・ジャパンに登録された工務店・設計事務所に限定されています。パッシブハウスへのリフォームを希望する場合は、まずはパッシブハウス・ジャパン認定の工務店に相談してみましょう。
リフォームで正式なパッシブハウスを建てるのは難しい
とはいえ、リフォームでパッシブハウスを実現するのはかなり難しいのが現状です。
パッシブハウスの基準をクリアするためには、日差しや風通し、分厚い断熱材を使用しても居住スペースが確保できる広さなどの条件に適した土地である必要があります。適した土地が見つかったら、設計段階から基準値を満たす住宅になるよう綿密に計算して建てていきます。そのため、既存の土地や構造を変えられないリフォームでは、認定基準を満たすことは難しくなってしまうのです。
リフォームでは、窓の位置や大きさ、リフォームしない住宅部分の断熱性が課題となるため、基準をクリアできる土地であれば建て替えのほうが適しているでしょう。
パッシブハウスを建て替えかリフォームかで迷ったときの見極め方
パッシブハウスの基準をクリアできる立地条件であれば、建て替えがおすすめです。また、基準を満たせる土地でなくても、パッシブハウス基準に近い省エネ住宅へのリフォームが可能です。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
パッシブハウスの基準を満たせる立地条件か
パッシブハウスの省エネ基準をクリアできるかどうかは、立地条件にかなり左右されます。暖房に必要となるエネルギーをいかに減らせるかが重要となるため、まずは南向きの土地であることが前提となります。
そのほか、年間の日射量が少ない地域でないか、性能の良い窓が設置できない防火規制地域でないかなども考慮する必要があります。
一見適していない土地であるように見えても、燃費計算や設計の工夫で基準をクリアできるケースもあるため、まずは自宅の土地について専門家に判断してもらうとよいでしょう。
パッシブハウスに適した土地なら建て替えがおすすめ
パッシブハウスに適した土地であれば、建て替えをするのがおすすめです。
パッシブハウスを建てるためには、既存の家全体の断熱構造から窓の位置や大きさまで全体的に大がかりな変更が必要となります。そのため、リフォームよりも建て替えで、ゼロから基準値をクリアするための設計を施したほうが、建築工程が容易になります。
また、建て替えのほうが総体費用を抑えられる点も大きなメリットだといえるでしょう。
リフォームでもパッシブハウス基準に近づけることは可能
新築や建て替えと同じ基準でパッシブハウスを建てることは難しくなりますが、リフォームでもパッシブハウスに近い省エネ基準の家を実現できます。
省エネ住宅へのリフォームでは、日射取得・日射遮蔽・集熱・蓄熱・熱移動・排熱・通風・採涼・気密断熱といった要素を構造や建材などに取り入れます。熱や空気の流れをコントロールすることで、冷暖房機器に頼らなくても快適に過ごせる室内環境を実現するのです。
具体的には以下のような施工が効果的です。
・パッシブ換気
対角線上に高低差をつけた窓を設置し、自然風だけで室内の空気の流れをコントロールする換気方法。下方に設置された窓から新鮮な外気を取り込み、高窓から天井や屋根裏にたまった温かい空気を外に逃すことで、エネルギーを使用せず効率的に家全体を換気できる。
・庇(ひさし)の設置
屋根や軒に庇を取り付けると、夏と冬で高度の異なる日射を効果的に遮ったり取り込んだりできる。取り込む日射をより自由に調節できるオーニングやシェードの設置も効果的。
パッシブハウスの目的は、自然エネルギー以外のエネルギーを極力使用せずに快適な室内環境を実現することです。厳しい基準値をクリアするのは難しくても、目的にそったリフォームを行うことは十分可能です。
まとめ
パッシブハウスの基準値をクリアできるかどうかは、立地条件にかなり左右されるため、リフォームでパッシブハウスを実現するのは難しいケースが多いでしょう。しかし、パッシブハウス基準により近づけた省エネ住宅にリフォームすることは可能です。まずは工務店に相談し、自宅を診断してもらうとよいでしょう。
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