住宅の断熱の方法は大きく分けて「内断熱」と「外断熱」、そして「付加断熱」の3つがあります。内断熱は、充填断熱工法や充填断熱、外断熱は外張断熱工法や外張り断熱ともいわれますが、ハウスメーカーなどによって違いはあっても、基本的には同じものです。
この「内断熱」と「外断熱」のほか、「内断熱」と「外断熱」を組み合わせたものが「付加断熱」となり、さらに高気密高断熱のすぐれた住宅性能で注目されています。
そこで、今回は断熱工法と「付加断熱」のメリットとデメリットについてご紹介します。
Contents
断熱工法とは?
住宅の断熱の方法には「内断熱」と「外断熱」があり、それぞれに断熱材を入れる箇所や気密性、そして、使用できる断熱材が異なります。
まずは「内断熱」と「外断熱」のそれぞれのメリットとデメリットについて解説します。
内断熱
内断熱である充填断熱工法は、壁や天井の中に断熱材を充填する工法です。断熱工法の中でも、一番費用が安い部類になります。また、壁内のスペースを利用し、断熱材の厚みが十分確保できるので断熱性能を上げやすいなどのメリットがあります。
しかし、壁内結露が起きやすいこと、断熱欠損も起きやすく気密性の維持が難しいなどのデメリットがあります。
内断熱のメリット
内断熱は経年劣化しにくく、耐熱性能が安定しています。柱などの構造部に、シート状やボード状の断熱材を入れ込んで充填することで、住宅の断熱を実現します。
もっとも一般的な断熱方法として用いられていて、新築住宅だけでなく、リフォームやリノベーションなどを行なっているほとんどの業者で対応することができます。
また、壁内部のスペースを利用するため、外壁の厚みを抑えられるので、デザイン性にこだわった住宅や狭小住宅などにも向いています。
内断熱のデメリット
内断熱は空気が出入りしやすく、建物の内側と外側で温度差ができるため、壁内部で結露が発生しやすくなります。
また、内側で熱が遮断されるため冷暖房が効き始めるまでの時間は短いですが、断熱材のない隙間があるため、熱損失が生じることで、冷暖房で適度な温度を保つ際の消費電力は大きくなる傾向があります。
外断熱とは?
外張り断熱工法は、柱の外側から家全体を包んで断熱をする工法です。熱が外部に逃げることを抑え、壁内結露が起きにくく、気密性の保ちやすいなどのメリットがあります。
しかし、費用が高くなりがちで、断熱材の厚さが限られてしまうのがデメリットとなります。
外断熱のメリット
建物全体を断熱材で覆う外断熱は気密性が高いため、壁内結露が発生しにくいというメリットがあります。結露が発生しにくいことで、カビの発生も抑えられ、劣化しにくいことから、住宅の寿命も長くなります。
また、室内温度が外気温に影響されにくいのも大きなメリットのひとつです。内断熱の建物と比べて、夏は涼しく、冬は温かく過ごすことができ、年間の冷暖房費を抑えることができます。
外断熱のデメリット
外張り断熱工法のデメリットは、比較的建築費が高額になることや躯体に施した外装材の重みで、外壁の安定性に問題が起きたり、強風や地震の際に変形してしまったりする可能性もあります。その他、充填断熱工法(充填断熱)と比べて、断熱材が経年劣化しやすくなります。
また、建物の外部に断熱材を取り付けることで、外壁が厚くなるため、狭小住宅には向いていません。外観意匠にこだわったデザイン性の高い家では、外壁の形状によっては断熱材が取り付けできない場合もあります。
付加断熱とは?
日本において、一般的な内断熱や最近増えている外断熱のほか、さらに断熱性能が高い工法として生まれたのが「付加断熱」です。
木造戸建住宅の場合、外壁から30%、窓・ドアなどの開口部から30%、換気口などから30%、その他の部位か10%程度壁の熱が外部に逃げてしまうため、快適な室内空間を実現し、空調効果を高めて光熱費を抑えるためには、断熱性をいかに高めるかが重要となります。
付加断熱は、柱間に設置された断熱材(=内断熱)と、外側に施工する断熱材(=外断熱)の両方を組み合わせた工法で、外部に逃げてしまう熱=熱損失を減らすことができるため、木造住宅においては高い断熱性能を確保することができ、木造軸組工法には最も適した断熱方法であるといえます。
付加断熱のメリット
付加断熱のメリットについてご紹介します。
断熱性能が高くなる
付加断熱は、建物全体を包み込む外断熱のメリットと室内の快適な温度を保つ内断熱のメリットを併せ持つことでさらに断熱性能が高くなります。
気密性が高くなる
断熱性能を上げるためには、気密性も重要となりますが、内断熱はすき間ができやすく、気密性が低くなるデメリットがあります。外断熱の特徴をあわせもつ「付加断熱」なら、気密性が高くなります。
結露が起こりにくい
壁内結露は断熱性能が下がるだけでなく、家そのものの劣化させてしまうため、家を建てる際には、壁内結露対策が必要となります。
壁内結露が発生すると
- 柱や土台に水滴が付くことで腐らせる
- 腐ることで耐震性が損なわれる
- 断熱材にカビが発生し健康被害を及ぼす
- 湿気により断熱材が重くなりズレが生じ断熱性能が下がる
などが起こります。
付加断熱は、家の寿命を短くする原因のひとつである壁内結露が起きにくいメリットがあります。結露が起きにくいので、カビの発生を抑え、建物の耐久性も向上します。
ランニングコストを抑えることができる
住み続けるだけで十分に元が取れます。ランニングコストが抑えられるのも付加断熱を採用するメリットです。付加断熱は、住み始めてからのランニングコストを抑えるメリットがあります。
高気密高断熱に優れているので、少しの冷暖房で部屋中の温度が快適に保つことができるだけでなく、光熱費の削減にもつながります。
付加断熱のデメリット
付加断熱のデメリットは次のとおりです。
コストが高くなる
付加断熱は内断熱と比べると、施工手間がかかるほか、使用する断熱材が増えるため、コストは高くなってしまいます。
しかし、夏は涼しく、冬暖かく、一年をとおして快適に過ごすことができるため、体感的なメリットは大きくなります。
使用できる外壁材の種類が制限される
付加断熱や外断熱は、外装材と下地の間に断熱層を設けるため、どうしても外壁材を支える下地から距離が離れてしまいます。
そのため、タイルやモルタルなど重量のある外壁の場合には、地震の際にズレやひび割れの原因となりかねません。
外壁の耐久性を考えると、外装材はできるだけ軽いもの金属系サイディングや板張りなどを用いるのがよいでしょう。
壁が厚くなる
付加断熱は、外断熱と同様に壁厚が分厚くなるため、敷地が狭くゆとりがない場合には、部屋がひと回り狭くなってしまいます。
限られた敷地での家づくりの際には、間取りを十分に検討する必要があります。
複雑な形状の住宅には向いていない
付加断熱は壁が厚くなるデメリットがあるため、細かい部分の施工が難しくなります。壁面が曲線になっている形状や細かい段差のある壁のような複雑な形状のデザインにはあまり向いていません。
高い施工技術や知識が必要
付加断熱は、断熱材を高精度で隙間なく張り合わせなければ、壁内結露を引き起こす可能性があり、高い施工力がなければ、断熱欠損だけではなく雨漏りや白蟻などの問題に直結します。
付加断熱は、適した構造材を用いることや防湿フィルムの施工など、しっかりと施工方法やそのメカニズムを理解した会社に依頼する必要があります。
付加断熱住宅を検討する場合は、必ず、その会社のこれまでの施工事例などの実績を確認することが大切です。
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まとめ
家づくりの際には、外観デザインや間取り、設備機器を優先的に考えてしまいがちですが、住宅性能をしっかりと考えることが毎日を快適に過ごすためには必要です。
高気密高断熱の住宅性能を実現するために、今注目されているのか、高い断熱性を確保できる「付加断熱」です。
付加断熱住宅をつくる際には、その性能を十分に発揮させるため、十分な知識と経験がある会社選びも重要なポイントとなります。
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