小さな家の設計を得意とする建築家伊礼智氏。
ちいさくてもゆたかに暮らせる家を数多く手掛けてきました。
空間工房LOHASでは、伊礼氏の家づくりに共感し、i-works projectに取り組みます。
今回は、伊礼氏の作る小さな家の間取りのレシピを、伊礼氏の著書「伊礼智の『小さな家』70のレシピ」の中からいくつか紹介します。
Contents
伊礼智の小さな家の原点
なぜ、伊礼氏は小さな家を得意としているのでしょうか。
その原点は、幼少期を過ごした沖縄の小さな家にあると言います。
沖縄の小さな家で生まれ育った伊礼氏。子供の頃に過ごしたのは延べ床15坪ほどの小さな家でした。
家族6人、増改築を繰り返しながら住んだ家が、伊礼氏の小さな家の原点なのです。
小さな家で育ち、血肉化された「小さな心地よい居場所」への嗅覚が、この上なく小さな家の設計を楽しいものと感じさせてくれているのでしょう。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
小さな家で生まれ育った伊礼氏だからこそできる設計なのですね。
伊礼智の小さな家の間取りの作り方
伊礼智氏の著書「伊礼智の『小さな家』70のレシピ」より、小さな家を設計するときの間取りの作り方のヒントになるようなレシピをいくつか紹介します。
敷地目一杯に建てない
伊礼氏は、敷地に目一杯建物を建てないことが大切だと言います。
家族4人でどれくらいの広さがあれば暮らせるでしょうか?
僕は4人家族で延べ床15〜20坪がギリギリであると思っています。延べ床20坪が確保できるのであれば、敷地に目一杯建てなくてもよい提案ができるかもしれません。
<中略>
敷地のゆとりの部分は庭とか外部のアウトドアリビング的なスペースとして残したほうが楽しい家になります。デッキも作れないほど目一杯に建てざるを得ないこともありますが、そのような家は生活の潤いを感じないものです。
そこが家の佇まいとか品格とか、住み手の豊かさに繋がります。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
敷地が広いからといって、目一杯に建物を建ててしまうのではなく、外部空間を作ることで暮らしが豊かになるのです。
対角線(最大視覚)を活用する
対角線を活用し、視覚的に部屋を広く感じさせる基本的な手法を紹介します。
正方形の部屋だとすると、対角線は1辺の1.4倍の距離がありますから、当然、広く感じます。一般的な分譲地では対角線方向に窓を設けると、ご近所の視線を避けられて、視線の抜けを得やすいものです。さらに、壁の真ん中に窓をつけるのではなく、角にL字型に開口部を設けると、対角線に意識がいくので、実際よりも広く感じます。
<中略>
正方形の部屋の中に、ダイニングとリビングの位置的な関係を、対角線に繋げていくような設計をすると同じ面積でも広く感じられます。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
とにかく、人間は斜めの方向に意識がいくと広く感じるわけです。
対角線を活用し、斜め方向に意識を向けることが、空間を広く見せるポイントです。
バルコニーをひと工夫
日本の新興住宅地が殺風景なのは、バルコニーが原因だと伊礼氏は言います。
延べ床面積に換算されない1m未満のバルコニーを欲張って作ることで、賃貸アパートと変わらない佇まいになっているのだそうです。
せっかく戸建て住宅を建てるのですから、安易にバルコニーをつくるべきではないと考えます。
<中略>
インナーバルコニーにすると外観もすっきりして、佇まいもよくなります。延べ床面積には入りますが、アパートが立ち並んだような街並みに対して、有効な手立てとなります。
より住み心地がよくなることを考えると、インナーバルコニーも1つの選択肢だと思います。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
延べ床面積に換算されないからと安易に奥行き1m未満のバルコニーを作ることで、外観が平凡なアパートのようになってしまうのですね。
1坪の標準
伊礼氏は、小さな家の設計において1坪をひとつの基準値としています。
伊礼智設計室として小さな家を設計するときの広さの標準があります。自分の経験から1坪がその標準。1坪の標準階段、1坪の標準玄関、1坪の標準浴室、洗面所も1坪とか、1坪あれば十分な部分について1坪を標準とします(トイレは1畳)。小さな家はそれぞれが1坪あればストレスがなく暮らせると感じています。
<中略>
ただ浴室、洗面所などの水廻りや玄関、階段は1坪で標準としましたが、他は標準にはしていません。リビングやダイニング、キッチンのあり方などは敷地に合わせて、住み手の要望を聞いてプランニングをすべきだと思うからです。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
標準化できる部分は最低限の大きさで標準化し、そのほかの空間を住み手の要望や暮らしに合わせてプランニングするのが、伊礼氏の設計の特徴です。
家具も部屋のボリュームに合わせて設計
伊礼氏の小さな家の設計では、家具の大きさにも細かく気を遣います。
大きすぎる家具は、それだけで空間を圧迫してしまうからです。
例えば造り付けのデスクをつくるときは通常奥行きを600mmくらいに想定しますが、小さな家ではボリュームがありすぎるように感じます。これを540mmでいくとか、480mmでもいけないとか、できるだけボリュームを減らすように検討します。
<中略>
箱物は思っている以上にボリューム感が出るので、少しでも小さく感じさせるための調整を繰り返しスタディします。
<中略>
小さな家を設計する場合は、家具のボリューム感への配慮は本当に大事なことなのです。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
部屋が小さいのに、標準サイズの家具を入れてしまうと、窮屈で心地よい暮らしを実現しにくくなってしまいます。
家の大きさに合わせた家具の大きさを検討することが大切なのですね。
玄関はコンパクトに
小さな家に広い玄関は必要ないと、伊礼氏は言います。
大きな家ならともかく、小さな家で玄関を広くするというのはどこかに世間に対する見栄がこびりついているか、玄関が外物置代わりの役割を持つ生活をされている方だと思われます。
僕はその見栄がいやだと思っていて(笑)、その無駄な広さはリビングなどに回すべきだと考えます。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
小さな家においては、無駄に広い玄関を作ることで、リビングやダイニング、キッチンなどのスペースを圧迫してしまう原因となってしまいます。
収納が欲しいのなら、玄関の横に扉付きの外収納を設けるなどの工夫が可能です。
靴の脱ぎ履きが窮屈でなく、家族分の靴が収納できるだけのスペースがあれば十分なのです。
伊礼智の小さな家の工夫
伊礼氏の小さな家の設計には、たくさんの工夫が随所に散りばめられています。
伊礼氏が小さな家を作るときにどのような工夫をしているのか、見ていきましょう。
建具は天井まで
天井が低くても、建具を天井までの高さにすることで、天井の低さを感じにくい。
これも伊礼氏の設計の工夫のひとつです。
天井を高くして垂れ壁をつくって建具を入れた場合と、天井を低くして建具を天井までの高さとした場合、目の錯覚を利用しているのかもしれませんが、天井が低くても、実際よりも天井が高く感じられます。
<中略>
吹き抜けを設ける場合には、低い天井は2100mmで抑えるようにしています。この低さが吹き抜けの高さを生かすのです。
高い天井も気持ちいいですが、低い天井も気持ちいい……、それぞれのよさを生かして理解していただきたいと思います。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
天井は、高ければいいというものではないのですね。
建具の高さを工夫することで、天井の低さを感じさせない工夫を施すことができるのです。
低めの家具を選ぶ
建具を天井までの高さにするのとは対照的に、家具に関しては低めのものを選ぶようにします。
小さな家は全体的に気付かれないくらいの縮小コピーをかけるみたいな感じなのです(笑)。普通の設計に90%くらいの縮小コピーをかけるくらいの感じでしょうか?小さな家の魅力はギュッとした密度の高い、コクのある空間だと思っています。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
小さな家を心地よく過ごせる空間にするために、標準サイズよりも小さな家具を選ぶことが大切。ギュッとした密度の高い、コクのある空間を生み出す秘訣なのですね。
廊下をなくし、家具で仕切る
小さな家では、廊下は無駄な空間になりがち。思い切って廊下をなくすというのもひとつの選択肢です。
小さな家を成功させるコツは、でこぼこした間取りではなく、できるだけ方形(四角い形)
にまとめることです。
<中略>
具体的なコツとしては廊下をできるだけなくすことです。
<中略>
通路としての機能しかない廊下は小さな家ではもったいないものです。
<中略>
仕切りは壁でという常識を捨てて、収納家具、置き家具を上手に使いこなすことで収納量を増やしながら必要な領域を切り取ることができます。
引用:伊礼智「小さな家」70のレシピ
仕切りは壁である必要はなく、小さな家では、少しでも多く収納や生活スペースを増やす工夫が大切なのですね。
まとめ
伊礼氏の建築の間取りの工夫について紹介しました。
数多くの小さな家の設計を手がけてきた伊礼氏だからこその工夫が満載です。
伊礼氏の著書「伊礼智の『小さな家』70のレシピ」では、他にも小さな家を設計するためのさまざまな工夫が実例とともに紹介されています。
ぜひ、書籍も手にとってみてくださいね。
<伊礼智氏プロフィール>
1959年 沖縄県生まれ
1982年 琉球大学理工学部建設工学科計画研究室卒業
1985年 東京芸術大学美術学部建築科大学院修了
丸谷博男+エーアンドエーにて10年ほど勤務
1996年 伊礼智設計室開設。
2005年から日本大学生産工学部建築工学科居住空間デザインコース非常勤講師。
2006年「東京町家・9坪の家」でエコビルド賞受賞
2007年「東京町家・町角の家」でエコビルド賞受賞
2013年「i-works project」でグッドデザイン賞を受賞。
主な著作:『伊礼智の住宅設計作法』(2009年 編集/新建新聞社・発行/アース工房)/『伊礼智の住宅設計』(2012年 発行/エクスナレッジ)/『伊礼智の「小さな家」70のレシピ』(2014年 発行/エクスナレッジ)「伊礼智の住宅デザイン 〜DVDデジタル図面集」(2017年 発行/エクスナレッジ)
空間工房LOHASでは静岡・富士山嶺の気候風土を生かし、富士ひのきや天然素材にこだわった高性能で自然環境や住まう人に優しい家創りをしている工務店です。
また、世界基準の省エネ住宅「パッシブハウス」の賛助会員工務店として、静岡県東部で初のパッシブハウス認定住宅も建築しております。
施工事例はこちら→パッシブハウスin静岡,富士宮市
静岡県で、省エネ性能の高いパッシブハウスをお考えなら、空間工房LOHASにぜひご相談ください。
■直接いらっしゃらなくても、ZOOMでのオンライン家造りも可能です。気軽に家造りの進め方や、移住者支援の補償のこと。
土地選びまでご相談にのっています。→ ご予約はこちら
■ 何かお家のことで質問があれば、お気軽にLINEでご質問ください→ こちら
■ ロハスのYouTubeチャンネル「輝く暮らしの舞台作りCH」では、 家づくりで後悔しないための情報や新築ルームツアーをUPしています→ こちら チャンネル登録よろしくお願いします!
– 富士市富士宮市で住むほどに健康になる注文住宅・木の家をつくる工務店 空間工房LOHAS(ロハス)
静岡県富士市荒田島町8-16
TEL:0545-57-5571
FAX:0545-57-5576
Email:lohas@kobo-lohas.com
HP:https://www.kobo-lohas.jp
家を建ててからかかるお金で、 後から後悔しない為に、最初に知っておいて欲しい事をまとめました。 お読みでない方はこちらからご覧いただけます↓
今までで200棟住宅を建築してきたLOHAS社長の寺﨑が 「良い家造り」のために知っておくと必ず役に立つ話。 こちらから読んでみる↓