皆さんは、2025年という近い将来から始まる「省エネ住宅基準義務化」をご存じですか?これからマイホームを建てよう、あるいは購入しようと検討している方は、どういった基準なのかを知っておきましょう。特に注文住宅では、具体的にどういった家にすればいいのかわかっていると安心できます。義務化されることによる変化を以下で確認しましょう。
この記事でわかること
・日本の省エネ基準の変遷がわかります
・省エネ住宅義務化についてわかります
・省エネ住宅義務化のロードマップについてわかります
Contents
省エネ住宅基準とは?
省エネ住宅基準には、以下の3つの基準があります。地球環境を守るために家ができることには何があるのか、どういった家が求められているのかをチェックしてみましょう。
住宅の省エネルギー基準
住宅そのものがエネルギー消費を抑えられるよう、努力義務を課しているのが「住宅の省エネルギー基準」です。今は努力義務で済んでいるので必ず守れなければならないルールではありません。この基準は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」、いわゆる建築物省エネ法にのっとったものです。制定されたのは昭和55年のことですが、平成27年にはより強化されています。
平成25年までに推奨されていたのは、断熱性の向上や、夏場に太陽光を遮れる仕組みでした。主に住宅の外側における省エネに目を向けていたのです。しかし、平成25年以降は住宅の外側だけでなく、住宅全体で省エネになるよう努力義務が課されました。ただし、日本のどの地域にも同じ基準があるのではなく、気候条件が異なるため8つの地域に分けてそれぞれ基準が設けられています。
省エネ機住宅基準は、制定された年によって内容が異なります。以下をご覧ください。
- 昭和55年基準(旧省エネ基準):省エネルギー対策等級:等級2
- 平成4年基準(新省エネ基準):省エネルギー対策等級:等級3
- 平成11年基準(次世代省エネ基準):省エネルギー対策等級:等級4
- 平成25年基準(一次エネルギー消費量基準):省エネルギー対策等級は平成11年基準に準ずる
- 平成28年基準(建築物省エネ法基準):省エネルギー対策等級は平成11年基準に準ずる
このように、年を経るごとに省エネ基準は厳しくなっています。
低炭素建築物の認定基準
省エネと似ていますが、低炭素建築物の認定基準というものもあります。最近、脱炭素という言葉をよく聞くようになりました。家にも低炭素で過ごせることが求められたのは、「都市の低炭素化の促進に関する法律」、いわゆるエコまち法が制定されたためです。低炭素建築物と認められると、所得税が軽減されるなどのメリットもあります。
低炭素建築物に認められるには、住宅の省エネルギー基準が定めている一次エネルギー消費量が決められた量だけ削減されており、かつ二酸化炭素の排出が一般的な住宅よりも少なくなければいけません。
住宅トップランナー基準
住宅の省エネルギー基準の努力義務は建築する側がするものですが、住宅トップランナー基準は、建築を行う側以外にも特定建築工事業者が対象となっています。家の構造や設備の規格を決める人も努力を求められるということです。
住宅トップランナー基準は注文住宅だけでなく、分譲住宅や賃貸物件なども対象としています。このことから、国がより一層住宅の省エネ化を求めていることがわかります。
2025年から適用の「省エネ住宅義務化」について
すぐに来る2025年には、省エネ住宅基準義務化が始まります。省エネ住宅は今までもありましたが、具体的にどういった住宅を建てる必要があるのでしょうか。どうすれば省エネ住宅として認めてもらえるのか、ポイントを3つピックアップしました。
外皮熱性能の向上
外皮とは、家の外部分を指します。具体的には、屋根や外壁、窓などです。これらの断熱性が高い家でないと、省エネ住宅と認められません。
屋根なら、屋根材を高いものにして、外気温が部屋の中に影響を与えにくいようにする工夫ができます。屋根材で人気が高いのはスレート材ですが、より高くてメンテナンスのコスパが良いものにするなら瓦がおすすめです。
外壁に関しては、外壁材にこだわることもできますし、断熱材をたくさん入れて家全体を魔法瓶のようにすることも可能です。せっかく付けたエアコンの効果を適切に発揮できないなら、それは省エネ住宅とは言えないからです。
窓に関しては、ガラスを2枚にした複層ガラスで断熱性を高めることができます。防犯や遮音性を高めることにもつながるので、少々コストはかかっても検討の余地はあるでしょう。
外皮熱性能向上のためには、高気密高断熱の住宅にする必要があります。詳しくは下記のコラムを参考にしてください。
エネルギー消費を減らせる設備の導入
住宅に住む上で、これからチェックされるのは「冷暖房設備」「換気設備」「給湯設備」「照明設備」「家電など」の5項目です。これらに関して省エネができていれば、不動産価値も高くなるでしょう。
冷暖房設備はエアコンが真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし、エアコンの効きが悪ければ光熱費は高くなり、省エネとは言えません。ですから、先ほど解説した断熱性の高い家が推奨されるのです。
換気設備において推奨されるのは、夏場にエアコンを使わずとも涼しい家であり、家の中に風を効率的に取り入れられる家です。これは住宅デザインによって工夫できるので、設計士の腕の見せ所となるでしょう。
他にも、太陽光発電システムやエコキュートなど、様々な住宅設備を導入することによって省エネ住宅に貢献できます。
断熱性の高い家、つまり高気密高断熱の家にすることでエアコン1台で家中快適な環境にすることが可能です。詳しくは下記のコラムを参考にしてください。
自然エネルギーを利用できる住宅作り
省エネ住宅にするには、設備の導入でお金がかかるイメージがあるかもしれません。しかし、実際には自然エネルギーを上手く利用することで、初期費用を抑えつつ省エネ住宅にすることも可能です。
先ほど少し触れましたが、家のデザインを工夫することで家の中に涼しい風を取り込めるようにできたなら、自然風を利用できていることになります。高い太陽光パネルを設置しなくても、庇を付けたり、軒を利用するだけでも夏場の暑さを軽減できるでしょう。こういった工夫はパッシブデザインと呼ばれ、省エネが実現できます。
パッシブデザインの設計手法について、5つの鉄則があります。詳しく知りたい方は下記のコラムを参考にしてください。
参考:国土交通省 住宅局|脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律
2025年以降の住宅における省エネ住宅ロードマップ
では、2025年以降は住宅の省エネ住宅義務はどうなっていくのでしょうか。政府は、2030年、2050年と、先を見通して目標を立てています。その目標に応じた住宅にすることが推奨されると考えられるので、以下でロードマップを見ていきましょう。
2030年の省エネ対策
2030年になると、省エネに特化した住宅であるZEHやZEB水準が省エネ性能に引き上げられ、適合が義務化される予定です。簡単に言えば、家で消費するエネルギーをプラスマイナスゼロにする住宅を作ることが義務化されるわけです。
今でも消費エネルギーをゼロにできる住宅はありますが、現時点では住宅設備の導入がほぼ不可欠となっており、初期費用は高くなってしまうことがネックです。
2050年の省エネ対策
2050年には、ZEHやZEB水準といった省エネ性能が平均的になることを目指しています。2030年時点ではゼロエネルギー住宅が省エネ住宅の中でもトップを走っている状態ですが、2050年にはそれがトップではなくなるということです。
エネルギー消費をゼロにするだけでなく、プラスして地球環境に良い影響を与えられる家作りが求められてきます。このころには、住宅設備のクオリティーも今よりかなり良くなっていることでしょう。
2050年以降の省エネ対策
2050年以降の確固たる目標は今のところ明確に出されていませんが、いよいよ人間による自然破壊などの影響が人類にも悪い影響を与え始めることから、さらなる省エネが求められるでしょう。住宅に限ったことではありませんが、早急に対策をしないと地球温暖化が加速し、日本も熱帯地域に入るかもしれません。
かなり先のことになると、これからどれほど住宅に関する技術が上がるのか不透明なので、具体的な目標や案を出すのが難しくなります。しかし、私たちが期待したいのは少ない予算でも省エネ住宅が作れるようになる未来でしょう。お金持ちしか省エネ住宅が建てられないのであれば、義務化されたときに困るのは貧困世帯です。安く家を建てようと考えていても、予算内に収まらないならマイホームをあきらめざるを得ません。そうならない未来が来るよう、より一層の技術の進歩が待たれます。
省エネの最高峰「パッシブハウス」については今後の日本の省エネ住宅のトップランナーとして必須の基準となるかもしれません。詳しくは下記のコラムで解説しています。
まとめ
いよいよ2025年から始まる省エネ住宅基準義務化、これからしなければいけないのは、今ある技術や知恵を使ってできるだけ家での消費エネルギーを減らすことです。ハウスメーカーや工務店と相談し、コスパが良く、かつ省エネ住宅として認められるような家作りをしていきましょう。
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