パッシブハウスという家をご存じでしょうか。ドイツ発の世界基準となっている省エネ住宅のことを言います。エコ住宅を考えると、新築を購入するときに検討候補にあがります。しかし、イニシャルコスト(初期費用)が通常の住宅より高いと思って、諦める方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事を読んでいただければ、なぜパッシブハウスの費用が高いと言われているのかも含めて、価格面でのパッシブハウスの特徴がわかります。
この記事でわかること
・パッシブハウスが高いと言われる理由がわかります。
・イニシャルコストとランニングコストの考え方がわかります。
・パッシブハウスは高くない本当の理由がわかります。
Contents
なぜパッシブハウスは高いと言われるのか?
高い断熱性の確保
パッシブハウスは、夏は涼しく冬は暖かく過ごすために、高気密・高断熱の性能がある住宅です。そのため、断熱性や気密性の高い部材を多く使用するので、素材の価格が上がります。
日本の家は壁の厚みや、断熱材の量から、元々の断熱性能があまり高くありません。
窓の断熱性能についても数値の義務基準がありません。しかし、他の先進各国には義務基準値が定められています。
窓の断熱性能には下記の特徴があります。
- 「熱貫流率」で表す
- 熱貫流率は「U値」ともいう
- 単位はW/㎡K
- 数値が小さいほど高性能の断熱性能をもつ
例えば、ドイツの窓の断熱性能基準値は、1.3W/㎡Kで、イギリスは1.8W/㎡Kです。日本には基準がないため、低い性能の窓ガラスでも販売することが可能です。
窓からの日射が必要
太陽の位置などを計算に入れた窓の設置が必要です。冬は窓から効果的に日射を受け、屋内に熱を入れるために窓が必要です。そのために、南側の窓は、サイズが大きな窓を日が当たる場所に設置するなどの工夫が必要です。また、北側の高所にも窓を設置し、屋内にこもった熱を逃す必要があります。
これらの窓のサイズや位置、枚数を正確に計算し、施工します。そのため、次のことが価格が上がる要因となります。
- 窓の数
- サイズ
- 施工費
- 断熱性能の高い窓
上記に加え、「熱交換換気システム」をパッシブハウスでは採用しています。このシステムは屋内の熱を逃さずに、室内の空気を新鮮な空気と入れ替えることが可能です。
工期の長さ
パッシブハウスは、通常の戸建住宅よりも工期が長くなる可能性が高いです。建築地に制限があるわけではないですが、立地によっては建築が難しい場合もあります。
建築可能かどうか下記のような、さまざまな調査が必要です。
南面に大きな建物があり、必要な日照を確保できるのか。
断熱材を使う分壁も厚くなるため、屋内床面積は狭くなる。施主が希望する床面積が施工できるのか。
庇の長さと角度をどれくらいにするか。夏と冬で日照時間や、太陽の動く角度が異なるため、日照を取り込むために重要。
上記のことや、下記のパッシブハウスの性能基準を満たす条件を全て調査・確認します。そして、その条件を満たすように工務店は確認しながら施工しなければいけません。
パッシブハウスの性能基準値
- 冷暖房負荷が各15kwh/m2以下
- 一次エネルギー消費量が120kwh/m2以下
- 気密性能として50Paの加圧時の漏気回数0.6回以下
施工内容や、面積によって家ごとに工期は変わりますので、具体的に何ヶ月とはいえませんが、通常の戸建住宅より長くなる可能性が高くなります。工期が長くなる分、工事代金は高くなります。
パッシブハウスは性能を高めるために、イニシャルコストを多少かける必要がありますが、長い目で見ると、光熱費は安くなり健康で長生きできる人にも環境にも良い環境住宅になります。住むだけで健康的に暮らせるパッシブハウスのメリットについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
家づくりにおけるイニシャルコストとランニングコストの考え方
イニシャルコスト
イニシャルコストとは主に住宅を建てる(購入する)ときの費用です。次のものがイニシャルコストです。
- 建築費(全額、もしくは頭金)
- 土地取得費
- ローンの保証料
- 引越し費用
- 各種税金
- 家具・カーテンなどのインテリア費用
- 家電費用
イニシャルコストを削減したいという場合、次のような方法があります。
- 建築面積を小さくする
- 購入する土地を小さくする
- 内装・水廻り商品などで高級品を選ばない
- 家具・カーテン・照明などのインテリアで高級品を選ばない
お金をかけるべきところを整理して、かけるべきところにはかけ、省くところは思い切って省く。ただ、安く耐久性の低い資材ばかりを選んでしまうと、家自体の経年劣化が早くなり、リフォームが早く必要になってしまう可能性もあります。
ランニングコスト
ランニングコストは、自宅を維持・管理していくための費用です。次のものがランニングコストです。
- ローン返済額
- 光熱費
- 水道代
- リフォーム費用
- 家具・家電の買い替え費用
- 固定資産税
イニシャルコストは最初の1回のみの支払いですが、ランニングコストは、「金額×何回必要になるか」が重要です。
コストを抑える方法は、回数が多いものや、1回の金額が高額なものは価格を抑えると良いでしょう。具体的には次のようなことです。
光熱費、水道代は毎月必要なので無駄に使わない
リフォーム費用は1回の金額が高額になるため、最初に選ぶ商品を耐久性の高いものにする
家具・家電は捨てる際にもコストが発生するため、長く使えるものを選択し、大事に扱う
イニシャルコストとランニングコストは両方大事
イニシャルコストとランニングコストは両方大事です。どちらの方が重要だから費用を多めに考える、というものではありません。
外観や内装などのイニシャルコストに費用をかけすぎ、ランニングコストに回す余裕がなくなると、日々の生活が苦しくなります。
逆に、ランニングコストを意識した場合、イニシャルコスト面の外観や水廻り、内装などを安く済ませようとします。せっかくのマイホームなのに、満足感が得られないかもしれません。また、内装や設備の耐久性なども不安になります。
マイホームが完成してからの生活を、できる限り具体的にイメージして無理のないように資金・生活プランを、バランス良く立てることが重要です。
パッシブハウスは高くない!環境にも人にも優しい省エネ住宅を総コストで考えよう
パッシブハウスのイニシャルコスト
前述の通り、パッシブハウスのイニシャルコストは高くなる可能性が高いです。しかし、基準値さえ満たせば、間取りでも、デザインも自由度が上がります。
そのため、断熱・日射に関するところに費用がかかるのであれば、関係のない内装や水廻り、家具・家電を許容範囲内で倹約すると、コストを抑えられる可能性があります。
パッシブハウスのランニングコスト
パッシブハウスは断熱機能をあげ、夏は暑い空気が入るのを防ぎ、涼しい空気が外に逃げないようにします。冬は冷たい空気が入るのを防ぎ、暖かい空気が外に逃げないようにします。そのため、エアコンを使う回数を減らすことができます。床暖房も必要がなくなる可能性が高いです。
また、高断熱・高気密・換気システムを使用し、家全体の温度差を少なくできます。そのため、冷暖房の効率がとても良い家になります。
そして、室内気温の変化が少なく、外気の影響も受けにくいため、結露の発生を抑えられます。結露から発生するカビの防止にもなりますね。
- 室内気温の変化が少ない
- ヒートショックを防ぐ可能性が上がる
- カビの発生からの健康、掃除被害を軽減できる
上記からパッシブハウスは体への負担が少なく、健康的な住宅ともいえるのです。
空調や健康という点で大きくランニングコストを減らすことが可能です。
住むだけで健康になる長寿命住宅をLOHASは提唱しています。人にも住宅にも優しい健康住宅について詳しく知りたい方は以下のコラムも参考にしてください。
次世代へ繋がる家
パッシブハウスが高いといっている方は次の世代まで考えていきましょう。
構造体が断熱材で守られているパッシブハウスは、通常の家よりも耐久性が高いです。自分の子供や孫の代のコストまで計算すれば、ランニングコストが少なくなるため、総コストは少ないといえるでしょう。
建築費を抑えて家の性能が悪くなると、結果的にランニングコストも上がってしまいます。電気代などのエネルギーに関する料金は今後も上がっていくでしょう。パッシブハウスは、イニシャルコストが高くても、ランニングコストで年々賄えます。
住宅が、何世代も受け継いで使われることを評価する方法がないため、「パッシブハウスは高い」という話が出てしまいます。環境や未来のことを踏まえて、長期的な視点でパッシブハウスを考えましょう。
まとめ
パッシブハウスのコスト面について記載しました。パッシブハウスは、ドイツ発祥の世界基準で建てられた省エネ住宅です。
エアコンを使わずに、もしくは少しの使用だけで夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。イニシャルコストは高いですが、ランニングコストは抑えられる住宅です。
長期間で考えると総コストは低くなります。パッシブハウスという快適な住宅での暮らしをご検討ください。
富士市・富士宮市周辺のパッシブハウスやパッシブデザインの住宅をご希望の場合は、パッシブハウスジャパン賛助会員である空間工房LOHASに是非ご相談ください。
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